8年前、3カ月間ほど都内で宿泊研修をする機会があった。
研修のメンバーは全国から集まったほぼ同年代の同業者たち。
金曜日の夜。彼らと日付が変わる頃まで飲んでいた時、
ふと、「築地へ寿司を食べに行こうか」
という話になった。
そのまま少しだけ仮眠をとって、始発電車
で築地へ向かった。
午前6時前、築地場内はターレットが走り回り、ごった返していた。
当時、築地場内のお寿司屋さんでは有名な店があって、
我々一行もその店前に並んだ。
待ち時間はたぶん30分ほどだったと記憶している。
『築地で寿司を食べた』という事実。
これでまた土産話ができたとその場を後にした。
後日。
またいつものメンバーで飲んでいた時、
明日の朝、もう一度築地へ行こうじゃないか
という話になった。
ノリのいいメンバーは再び始発電車で向かった。
日比谷線の築地駅で降り、歩くこと10数分。
角を曲がってその店の前を見ると、前回の時よりもはるかに長い長蛇の列。
待ち時間は1時間を超えそう…
くじけそうになりながらふと見渡すと、
角から2軒目のお寿司屋さんの前が比較的空いていた。

寿司大(すしだい)。と、看板には書かれていた。
とりあえずここにに並ぼうということになり、待つこと30分で店内へ。
一列に並んだカウンター席が12(当時)しかない。
お店の人がお茶を出したりすると、身体がぶつかる狭さ。
前回の店も狭かったが、それに輪をかけた感じだった。
カウンター内には職人さんが3人。
「ご注文は?」との問いかけに、
入口に貼ってあった「おまかせ」を注文。
これは店長が選んだネタ10貫(巻物含む)+プレゼント1貫(なんでもOK)というもの。
ここからが前回のお店とは違った。
とにかく職人さんが人なつっこい笑顔で話しかけてくる。
初見の客であっても関係ない。旧知の仲のような雰囲気だ。
築地は銀座に近い。
飛び交う会話に耳を傾けていると、銀座で飲んでいて、そのままタクシー
で築地へ
という人もいる。常連さんが多いこともわかった。
全体のペースを見ながら、1貫ずつ握ってくれる。
お茶が切れていないか、ビールの残りはどうか…そんな気遣いも怠りない。
10貫、食べきったところでプレゼントの1貫を何にしようか考えていると、
常連さんと思われる方が職人さんに声をかけた。
「トロの炙り」
「あいよっ!トロの炙り」
おっ、炙りメニューもあったのかと思い、
「じゃぁ、私もトロの炙りを」と注文した。
「んっ、んっまいっ!!」これまでの生寿司とはまた違ったアクセントのある1貫だった。
ちょっと恥ずかしかったが、常連さんのマネは功を奏した。
以来、私の最後の1貫は、一貫?して「トロの炙り」となっている。
我々一行はすっかりその店のファンになった。
10+1貫以外にサービスで出てくる味噌汁。これがうまい!
さらにサービスで出てくる生海苔の入った焼きたて卵焼き。絶品。
冬場限定だが真鱈の白子。これまた絶品。
2週間後にまた訪れた。
職人さんたちは、自分たちのことをちゃんと覚えていてくれて、会話はさらに弾んだ。
こうして、都内滞在中、寿司大ファン一行は何度となく足を運んだ。
以来、都内に出かける時には、寿司大へ行くのが通例になった。
寿司大へ行きたくて、東京へ出かけることもあった。
ところが次第に様子が変わってきた。
年々、待ち時間が長くなってきたのである。
店は午前5時に開店する。
営業は午後2時までだが、その時間までに並んでいれば、必ず食べられる。
一度、土曜日の午後に行った時は、食べ終わったら午後4時過ぎということがあった。
近年、その列の長さがさらに長くなった。
原因は外国人。
何でも日本を紹介するガイドブックに、寿司大が紹介されたのだという。
ちなみにこれまで最大で2時間半待ったことがある。
曜日や時季によってもかなり違いはあるらしいが…。
始発電車で行ったのでは、待ち時間が読めない。
一計を案じた。
築地に宿
をとるのである。そこから徒歩でお店に向かえば確実だ。
その方法で、午前4時50分頃に到着したところ、口開けの客となったことがあった。
ところが最近では、午前5時頃に到着したのでは、とても最初の13人(1席増えた)になれない。
このところの私の寿司大行きは、午前3時半起床で宿を出発し、午前4時前到着という状況になっている。
私がプレゼントの1貫で「トロの炙り」を頼むと、「じゃあ、私もそれを」という方がチラホラ。
こうして歴史は繰り返されていくのである
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